経済の仕組み③

投資

前回に続き、伝説の投資家レイ.ダリオ氏の「30分でわかる経済の仕組み」の備忘録としての概略です。

経済のからくり

でも忘れてはいけないことがあります。債務が経済の波の高さを押し上げたとしても、その波はいずれ低くなることです。これが債務の短期周期となります。経済活動がふえると経済が拡大し短期債務変動が始まります。

すると、支出がさらに増加し価格が上昇し始めます。これは経済がクレジットによって押し上げられたからです。このクレジットは何もなかったところに発生したのです。支出と収入が生産高より速いスピードでふえると価格が上昇し始めます。

価格の上昇はインフレを招きます。中央銀行はこのような問題を避けたいのでインフレを避けようとし、価格の上昇を感知すると利子を上げるようにします。利子が高くなるとお金を借りることができる人の数が減ります。すると、既存の債務のコストもふえます。

これはあなたのクレジットカードの支払額がふえることを意味します。借りる人が減り、返済のコストが高騰するので、一般市民の支出は減ります。支出はほかの人の収入ですから収入が全体的に縮小します。支出が減ると価格も減少します。これがデフレです。経済活動が縮小し、不景気となります。

不景気がひどくなりインフレの問題がなくなると、中央銀行は利子を引き下げ経済活動を活性化しようとします。利子が引き下げられると債務返済費が縮小しますから、借り出しと支出が再度ふえます。これが経済活動を押し上げます。これが経済活動のからくりなのです。

人はすべてが順調だと思いがち

短期の債務周期で支出に影響するものは、貸し手と借り手がクレジットを容認する度合いです。クレジットが簡単に得られると経済は拡大し、クレジットの獲得が難しいと不景気となります。この周期をコントロールするのは主に中央銀行です。

短期債務の周期は大体5年から8年です。そしてこれが何十年にもわたって繰り返されます。ここで注目してほしいことは周期の底と頂点は、先の周期と比べて高くなり債務もふえています。なぜでしょうか。なぜなら人は債務を返済するよりは借用額と支出をふやす傾向があるのです。

これは人の知恵です。このために長期の波を見ると債務は所得より速いスピードで増大し、これが長期の債務変動となります。人の債務が増大していても貸し手はクレジットをさらに提供しようとするのです。なぜでしょう。人はすべてが順調だと思いがちだからです。人は最近の動向にのみ注意を払います。

最近何が起こっていますか? 所得がふえている、資産の価値もふえている、株価も高騰している、ブームです。このようなときにはお金を借りても物品、サービス、資産を買うのが良策なのです。この傾向が社会に充満するとバブルとなります。

債務がふえていても所得がそれと同じくらいふえていれば返済の問題はありません。債務と所得の比率を債務負担率と呼びましょう。所得が増加している限り債務負担率に問題はありません。資産の価値も高騰します。人々は多額の借金をつくって資産に投資します。これが価格をさらに押し上げます。人は裕福だと感じます。債務が膨れ上がっていても所得と資産価値がふえていますからクレジットを得ることに危険はないのです。

バブルの終わり

でもこれは長続きできませんし、長続きはしません。何十年もたつと債務額がだんだん大きくなり返済額がふえてきます。そして返済額が所得よりも速いスピードでふえるときが来ます。すると人々は支出を抑えることになります。1人の支出はほかの人の所得ですから所得水準が下がりだします。

すると借りることも難しくなり縮小傾向となります。債務の返済は依然として続きますから支出はさらに減少します。経済変動の波のぶり返しが起こるのです。これが長期債務周期の頂点となります。債務負担が支えきれなくなったのです。

アメリカ、ヨーロッパ、その他の地域では、これが2008年に起こりました。同じ理由で日本では1989年に起こり、アメリカでは1929年にも起こりました。こうなるとレバレッジが勢いをなくします。そうなると支出が減りだします。

所得が縮小し、クレジットが消滅し、資産価格が急落し、銀行は苦しくなります。株式市場はクラッシュし、社会的緊張感が強くなり、この悪循環が繰り返されることになります。所得が減り、債務返済がふえると借り手は締め出されてしまい、クレジットは底をついてしまい、借り手は返済に充てるお金を借りることもできなくなります。

このため資産を売り払うことになりますから市場は売りに出される資産であふれます。すると株式が暴落し、不動産市場も崩壊し、銀行が苦しくなります。

資産価値が減ると担保の価値も縮小することになりますから、借りることがさらに難しくなります。人は貧しいと感じ、クレジットは蒸発してしまい、支出は減り、所得が減り、資産価値が減り、クレジットが減り、借りることがさらに難しくなる悪循環です。

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