経済の仕組み④

投資

伝説の投資家レイ.ダリオ氏の「30分でわかる経済の仕組み」の備忘録としての概略です。

経済の価値の消滅

これは不景気と似ているようですが違います。利子を下げても景気回復に結びつかないのです。不景気なら利子を下げれば借りる金額がふえます。でもレバレッジが消滅していますから利子を下げようとしても既に利子は低くなっており、ときには0%になってしまいます。すると景気回復は不可能です。

アメリカの利子はレバレッジが消滅した1930年代に0%となり、また2008年にもそうなりました。不景気とレバレッジ消滅時の違いは、後者では借り手の負担があまりに大きくなっていることです。これは利子を引き下げても回復が不可能です。

借り手は全額を返済することができない現実に直面します。借り手は返済能力を失い担保の価値はなくなります。負債の重さに耐えきれず借りる気力もありません。貸し手は貸すことをやめ、借り手は借りることをあきらめます。経済の価値が消滅した状態となっているのです。これは個人も同様です。

ではレバレッジが消滅したときどうすればよいのでしょうか。耐えきれないほど大きい債務負担を縮小しなければなりません。これには4つの方法があります。

第1に、人、ビジネス、政府が支出を縮小する。第2に、債務は不履行となりまた再編される。第3に、資産は富裕層からそれ以外に再分配される。そして第4に、中央銀行が新しい紙幣を印刷する。この4つはレバレッジが消滅した際に実際に起こっています。

資産と考えていたものが消滅したとき、恐慌に気づく

普通、支出がまず縮小されます。人、ビジネス、政府が財布のひもを締め、支出を縮小し債務を返済しようとします。これは緊縮策と呼ばれます。借り手が借りることをやめ、古い債務の返済を始めると債務負担率が減ると考えがちですが、その逆が起こります。

なぜなら支出が減り、支出はほかの人には収入源ですから所得が縮小します。所得は債務返済より速いスピードで縮小します。すると債務負担率が悪化するのです。以前にも言ったように支出が減るとデフレを起こします。ビジネスはコストを減らそうとしますから雇用が減り、失業がふえます。そうするとさらに債務を減らす必要が出てきます。

借り手の多くは借金を返済できません。借り手の債務は貸し手の資産ですよ! 借り手が銀行に返済できないと人々は銀行に預けたお金が心配になり、銀行に殺到して引き出そうとし、銀行の経営は難しくなり、人々やビジネスは債務の返済が不可能となり、このため経済恐慌となります。恐慌は人々が資産と考えていたものが消滅したと気づいたときに起こります。

飲み屋に戻って考えましょう。ビールを飲んでツケにしました。飲み屋に後で返済すると約束したのです。これは飲み屋にとっての資産です。でも約束が破棄され返済ができなくなるとツケが不履行となります。すると飲み屋の資産の価値がなくなってしまいます。消えてしまうのです。貸し手は資産の消滅を避けるため債務の再編に同意します。でもそうすると返済額を縮小したり、返済期間を延長したり、最初に決めた利子を引き下げたりします。

債務を縮小するために契約が破棄されますが、貸し手は全く返済されないよりは幾らかでも回収したいのです。すると債務が消滅しても債務が再編されると所得と資産価値は急速に減り、債務負担率がさらに悪化します。支出を減らすのも苦しいですが債務を減らすのも大変なのです。

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